『蠢く島』や『雪の降る夜に』等のひまつぶしシナリオ通過者で行く『沼男は誰だ?』が最高だった件

 

最高の地獄でした。

 

 

※以下、『沼男は誰だ?』『蠢く島』『雪の降る夜に』のネタバレあり

 


●今回の探索者の大まかな紹介

継続組(探偵・探偵助手・精神科医・貧乏大学生)
『対なす悪夢』『Hello world.』『蠢く島』『雪の降る夜に』『生命の知識』を通過済み。
『蠢く島』では、貧乏大学生は見事吸血鬼になり、『雪の降る夜に』では自分を慕ってくれた友人の女性から身を引いてしまう。
また、『雪の降る夜に』まで同行していた探索者1名(エンジニア)は『生命の知識』には参加せず、そこから音信不通となる。

新規組(貧乏ラッパー)
エンジニアの弟。ひょんなことから貧乏大学生と親しくなる。

 

●継続でいく『沼男は誰だ?』の良さ
このシナリオは、新規でも継続でも十分楽しめるシナリオだが、やはり継続で行くことの魅力は大きいと思う。
それまで深めてきた仲間との絆、これまでに助けてきた多くの命、幾度の狂気に晒されてきた精神。それらを抱えたまま挑むからこそ、このシナリオは上質な地獄に堕ちるのだろうと思う。

このシナリオ、継続で回す場合は所謂「ナイア」役に探索者の知り合いを出すこともできるだろう。今回は「ひまつぶし卓」様のリプレイを参考としたため、そのギミックを採用した。
今回は、貧乏大学生を慕う友人の女性に「ニャルラトテップに脅され、探索者を守るために黒幕に協力する」役を、かつての仲間であるエンジニアに「沼男をニャルラトテップとともに生み出し、母体の力を継承した」役を演じてもらった。
もちろん、このギミックがすぐに分からないように、「ニャルラトテップには貧乏大学生を慕う友人に扮してもらい、ずっと探索者と行動を共にする」という仕掛けも用意した。

「自分とは何か」「何をもって自分と定義するのか」が本質的なテーマであるこの作品において、「おぞましい神と友人の入れ替わりに気が付けるかどうか」「ここで気が付けないようでは、沼男の存在を否定などできないではないか」と突き付けるために、最高のギミックになったと思っている。

これも、継続探索者がいたからこそできたギミックである。継続で行く『沼男は誰だ?』はいいぞ。

 

●継続と新規、どちらの探索者もいてこその、深まる価値観
だが、この探索者たち『蠢く島』『雪の降る夜に』で、人間の《復活》を試みている。人間として死に、吸血鬼として生き返った仲間を、それでも仲間だと思う探索者が、どうして沼男を否定できようか?

だから、新規探索者を一人、入れた。
この探索者、貧乏ラッパーは、黒幕の一人であるエンジニアの弟ながら、沼男を否定する側の人間であった。
このシナリオの醍醐味は、それぞれの「私とは何なのか」を問う部分にある。そのとき、全員が同じ答えでは、はっきり言ってつまらない。別の価値観の人間が一人でもいるからこそ、議論は深まり、お互いに納得のいく結末を迎えることができるのだ。

 

●上質な地獄
最終的に、今回のセッションではエンドA、「母体を殺し、全ての沼男を殺す」エンドを迎えた。
最終局面では、探偵助手以外は全て沼男となっていた。沼男となった彼らは、そのことに自覚がある者もいない者もいたが、最終的に「沼男を肯定する」結論に至り、母体を手にかけることはなった。
だが、人間であった探偵助手(自身が人間か沼男か、明確な確証はない)は、「残った60億人の命が失われるのを見過ごせない」と悩み抜き、最終的に母体を殺す。
正しくは、母体の力を継承したかつての仲間・エンジニアを、殺す。
そして、探偵助手の下した決断により、他の探索者は沼男としての死を迎える。
生き残ってしまった探偵助手は、絶望の中を、それでも失われた命を背負って生きていく。
……最高の地獄ではないだろうか?

生と死、死者の復活、私とは何か。何をもって生と呼べるのか。何をもって死と呼べるのか。
探索者は考えに考え抜いた。全員の答えが一致することはなかった。
だが、それでも最期は、全員が納得のいくラストを迎えることができた。
こんなにも残酷で、だけど美しいラストを私は知らない。

これまでのセッション人生の中で、この物語はずっと心のどこかに残り続ける。そんな確信がある。
最高の物語を紡いでくれたPLたちへ、本当にありがとう。

 

Futures made of virtual insanity now.

                                                       (Virtual Insanity/Jamiroquai

 

●シナリオ本家

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●参考させていただいたセッション・サイト

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